人によって住宅に対する価値観は面白いほど違うものです。
価値観の多様化は自由で豊かな社会の裏返しで喜ぶべきことではあるのですが、それでも本来のあり方は昔からそんなに変わってはいないのではないでしょうか。
誰もが考える共通の価値観が住宅に対するそれにもあるのは間違いないとは確信しているのですが、表面的な具体的好みは呆れるほど千差万別です。
住宅は生身の人間が過ごすという当たり前の事実があるのは百も承知のはずの設計者が、ときとして自分の主義に溺れていて見逃してしまう悲しさも感じます。
壁という存在に対して生活するご本人が設計者が思いもよらない感想を漏らされることもあります。
「どこに絵を掛けましょう?」
たったこの一言でハッと目が覚まされて、自分の思っていた住宅に対する考え方と大きく外れてしまっていたと反省したことのある設計者はたくさんいらっしゃることでしょう。
必死に自分の考え方を実現しようと踏ん張っている設計者であればあるほど、絵を掛ける場所や下地の具合、果ては設計当初の雰囲気作りなど、グルグルと思いが回転することでしょう。
建築主であるあなたにお教えしたいのは、そこでさも簡単に「どこでもいいですよ」なんて淡白な答えしか返ってこないようでしたら、要注意です。
果たして何が作りたかったのかをお尋ねになった方が得策です。
どの業界もプライドを忘れた行動が報じられているようですが、それほど思い入れをもって仕事に当たりたいものです。
それにしても壁の下地がどこに入っているかははっきりしておきましょう。