契約の中身を考える・その9

建築請負契約書には契約約款というのが添付されていますので一度目を通してみてください。といっても細かな文字で法文的に書き込まれていますのでついつい読むのがおっくうになってしまいます。

契約の内容に落ち度がないように、トラブルが起きたときには解決の規範となるようにと建築団体のみならず弁護士団体なども作成して添付を促しています。
人間関係の密接な地方にはありがちなことですが、お互い信用しているからと添付をしないのは絶対やめてください。
また、一度は細かな部分まで読むように心がけてください。

実際に設計監理をしていてよく問題になってくる部分を特筆してみます。
その一つが瑕疵の担保責任です。噛み砕くと引渡後に見つかったような建物の不具合に対する責任の所在に関してです。

たとえば、建具の動きが悪くなったとき、機械の調子が良くないとき、床が鳴るとき、などなど。
こんな場合は引渡書をもらってから最低でも一年は無償で直してくれるはずです。

宗教と住まい・その1

ごく最近、父の急死に直面して喪主という経験したくなくともせざるをえない立場に立ちました。
小生の地元にもご多分に漏れず「揖斐広域斎場」という公共施設が整備されており葬儀会社による葬儀も普及しつつありますが、自治会の運営による在来の形式も相変わらず残っています。

父は地元に永くお世話になっていたこともあり、当然のごとく自治会運営の形をとりましたが、この場合は葬儀の当家(小生の家族)や親類も巻き込んだ協力体制を取ることになります。
小生も当然初めての経験に右往左往するばかりで、周囲の情報を集積して方針ややり方を決めてゆく泥縄状態。
やはりそつのなさにおいてはプロの手には遠く及ばないのですが、父がそれを気にする人間ではなく、むしろ近所の方々に送ってもらったということに喜んでいるに違いありません。

そんな事情があって葬儀会場は自宅を使用しましたが、
今でもこの地方に残る八畳が四つ住まいの1階の西面に配置する伝統的プランにも、この期に及んで先人の知恵を感じてしまいました。

畳というフレキシブルで適度な柔らかさと落ち着きのある雰囲気の素材感、祭壇を組み上げて周囲を飾ったときの会場の雰囲気、親類縁者や地元の方々を収容したときの適度な広さ、通夜葬儀当日の人の動線を整理する便利さ、などなど。

住まいは葬儀の二日間のためだけにあるべきではないとはいうものの、和室のしつらえに込めてきた先人の宗教上の思いや普段の生活への思いが存在しており、プロとして再確認の必要を感じました。

デザイン寛的・その7



皆さんは室内に柱がポツンと独立して立っているような部屋を見たことがありますか?
また、そんな状況は気にしますか?

建築主さんとプランの打合せを進めている課程では、平面図を前にしていることが多いものです。
仮に立体的なパース図や模型が隣にあっても理解の度合いが浅い状態ではかなり打合せは紛糾します。(こちらの能力不足かもしれませんが)

そんな一連のプラン作成の流れの中で、突然部屋の真ん中に柱がポツンと現れようものならばたいへんです。

もちろんこちらとしてはその柱に対しての構造上あるいはプラン上の大義名分を振りかざしてみてもケンモホロロ・・・・となることもありますが、地震発生のテロップがテレビに何度も流れるとさすがに状勢が変わってきています。

デザイン上の面白さもさることながら、やはり構造上の理由で決まるべき性質の話しであることをここでは強調しておきたいものです。

デザイン・寛的・その6



空間の魔術師とか匠の技なんてことばがテレビの中で踊っている時代になりました。
特に最近は国会の証人喚問にまで建築士さんが登場して午後のゴシップ番組にネタを提供しています。

デザイン的に洗練された住まいを求めてやまない人種も以前よりずっと増えてきた観もあります。
確かに生活の充実感満足感は、良いデザイン気に入ったデザインに包まれておれば得られることには間違いありません。
この椅子はコルビジェの頃のもの、この開放性は林昌子ばり、この打ちっ放しは安藤忠雄の世界か、とデザインフェチぽいですね。

しかし、それだけでいいですか?

年齢的に小生も贅沢になってきたのでしょうか、はたまた現実に住んでいる住まいが古くて不満まるけだからでしょうか、体にストレスをもたらす住まいの空気環境はいやですね。
使い勝手の良いトイレや快適で暖かくて温泉のようなバス、どこにいてもネットいじりができたり、などなど。

デザインが良いからと賞をいただけるより、美味しい食べ物、暖かい環境や家族のアットホームな雰囲気がいいですね。
みなさんはどうですか?

建築請負契約の中身を考える・その8

建築主としては建築請負契約を取り交わした以上は、その内容に従った建物を作ってもらわなくては困ります。

契約の内容と食い違う建物であってはなりませんが、工事の進行過程において無事完成してもらうためにと、それがどこかが思いと違うことを気が付いても我慢してしまうことがままあります。

設計監理者がいる場合は、気が付いた時点で専門家としてどう判断するかの意見を訊いて、工事の見直しを請負業者にしてもらうことを決めることができますが、そうでない場合はもんもんと一人で悩んでしまうこともあるでしょう。

ここで忘れてもらってはならないことは、工事の変更は絶対無理でないということす。

工程が時間的に間に合い、しかも大きな変更とならない場合や軽微な場合、あえて相談してみたらかえって減額の対象になっていたなどということもあります。

すなわち相談も出来ないような肩の凝るような人間関係は作らないことがよいと言えますし、変に契約至上主義の工事業者は避けた方が良いとも言えます。

建築請負契約の中身を考える・その7

建築請負契約で注意しなければならない大きなポイントの一つに契約の範囲を上げなければなりません。
必ず契約の当日にもう一度再確認をしてください。
設計打合せの課程で何度も話題には上っているはずですが意外とお互いの意識には食い違いが生じやすいものです。
ズブのシロートとプロでは用語の扱いが根本的に違っていたり、この程度は軽微なことだからなんとかサービスしてくれるでしょう、とタカを括ってしまわないようにしましょう。
諄くなってもお互いのためですから、煩わしく思わないで誠実に確認をやり直しておきます。
普段工事を監理していて思うのは、小さな確認を逃したために、工事終盤になって思わぬ追加精算にビックリ・・・・という場面があります。

たとえば、電話移転、敷地内配管、屋外の工作物、建物周囲の整地、犬走り、郵便受け、表札、門のインターホン、水道の本管延長や引き込み、などなど、数え上げればいくらでも出てきてしまいます。

建築請負契約の中身を考える・その6

契約の当日、請負契約書を挟んで建築主が契約書を眺める目と請負業者のそれとは違いがあります。

もしもそれが住まいの契約書であった場合には、建築主は工事の完成に夢を膨らませている気持ちと何日にどれだけの金額を納めなければならないかを気にする気持ちが混在する状態ではないかと想像しながら契約書捺印署名に立ち合っています。
ところが請負側の建設会社はといえば、思いのほか同じ当事者でありながらクールな雰囲気で捺印されています。

建築主は契約書の文字面というより文字の筆圧や行間に込められた請負業者の心意気を読みたい気持ちの方が強いようです。

事業用施設の請負契約の場合のお互いの気持ちの食い違いはまたカラーの違ったものなのでしょうが、いずれにせよここが建築現場で起こる種々のドラマの始まり第1幕といった感じです。

建築請負契約の中身を考える・その5

建築物の中身により請負契約の中身、性質は変わります。
たとえば分かりやすい例で言えば、春先のオープンに一大イベントを組んでいる店舗新築と、何年も思

いを暖めてきた住まいを建てるときでは、字面、項目は同じ契約書でも当然のごとく中身に大きな相違

があるのを理解して頂けるでしょうか?

事業達成を目的とする場合、個人の住まいへの夢を達成する場合、それぞれ請け負う建設会社への期待

の種類が違っていますよね。
とにかく予定のオープンに間に合うように設計図の内容を具体化して欲しいというドライな契約に比べ

て、住まいのそれは反対にウエットです。

理屈っぽく言うと建築の請負契約書にも「行間を読む」必要があります。

建築請負契約の中身を考える・その4

建築の請負契約書は出来上がった工場製品を手に入れるときの契約とは大きく違います。忘れがちなことですが、これから時間をかけて具現化する建築物を作ってもらう契約です、入荷するまでちょっと待ってくださいなんて気軽な話しではないとう点です。
「そんなこと分かってますよ」と言われても分かってないことがたくさんあります。
その一つは掛かるお金はどれだけかということといつまでに仕上げてくれるかということは、工事を依頼した施主側も依頼された施工者側も重要なことには違いないので、お互いが契約を結ぶ際にはかなりシビアに話し合いを持つことになります。

しかしお互いは契約の当事者であるという宿命を逃れることが出来ないため、設計と監理を担当する第三者である小生にしか見えてない事柄が幾つもあります。

たとえば、ごく単純に慌てすぎてないか、やみくもに早ければ良いというものではなく(工事担当にとっては早いほうが会社決算期を睨んだ場合有利なときもあります)待つことと工事進行のタイミングにも「旬」があります。

具体的には、自社の他工事の工程都合により契約工程を強引に変えてしまおうという行為に施主の誠意を無にすると判断して、契約金を削減したこともあります。