建築請負契約の中身を考える・その3

請負契約書には一番大切な契約書の他に契約約款と見積明細書、設計図書が添付されます。ここのところが意外と知られていません。
契約書には、契約の当事者(施主と建設会社)が誰と誰であるか、金額と支払時期、工事の工期、お互いの署名捺印などが主な内容です。
どれも一番大切な項目で、これだけで済ます工事業者もいますがそういった場合は要注意と考えてください。
いくら信頼していても内容の明確でない、すなわち見積明細もないようでは言語道断、さらに添付されていたも一式という言葉ばかり並んでいるようでしたらこれまた注意。

ところがこれだけではダメであることが分かりますか?

そうです、肝心な設計図はどうなっているのでしょう?
見積の明細書で内容が書かれていても、それは何が建物に取り付けられるかという程度の意味であって、どういった性能の造形物が出来上がるかが全然不明です。

小生は何回も話し合いを繰り返して煮詰めて製作した設計図書を契約書に添付した上で、さらにそれに書かれている内容を見積より優先させるという形を取っています。
すなわち、設計図に描かれていて見積明細にない場合は図面によって工事をしてもらうということです。

当然といえば当然ですが。

建築請負契約の中身を考える・その2

契約といっても、建築主と建設会社の契約と建築主と設計事務所との契約では大きな差があります。
建設会社とは「請負契約」、設計事務所とは「委任契約」を結びます。
「請負」には完全に実行するという責任の重さが最上級といえます、「委任」とは建築主の代理を務めるという責任に重点が置かれています。

請負契約については、残念ながら、この契約の意味合いを理解しているのかどうかは定かではありませんが、最近のある事件では、完全にこれを裏切った行為を建設会社がしているということです。
法的にはかなりの拘束力があり引渡までの工事の完全遂行のみならず、さらに住宅新法にも規定がありますように雨漏りや構造欠陥については、引渡日より10年間の保証義務もあります。

設計事務所との委任契約は、建築主の代理という形をとっていますので、中間の立場で専門家としての経験を土台に、重大な請負契約を遂行する建設会社の道筋が外れないように監修するわけです。

ここで強調しておきますが、かの「姉歯」さんは建築主と委任契約など結んではおりません、建設会社の下請けとして都合の良い計算書を偽造してしまったのです。
同じ職域の人間として恥ずかしいお話しですが、区別してください。

建築請負契約の中身を考える・その1

本日は某建設会社と施主様との契約の日でした。
想像以上にあっさりと契約正本に署名とお互いの印鑑をつくという短時間の作業ですが、この日を迎えるためには、実は設計者は知られざるかなりの知力を使います。
ご存じない方が多いでしょうね、なにも建物の性能を確保したりデザインを工夫したりの研究者実務者であるだけでは、とても一人前の設計者とは言えないのです。

契約は建物にコストというエンジンを取付て命を与える作業です。
設計図が描けるのは当然で、どれだけすばらしい設計でも現実の建物の形を創り上げることが出来なければ、やはり絵かきさんのそしりを受けるだけです。
意外と知られていないようですが、その絵に命を与えるには、建設会社それぞれが違ったコストの感覚をも考慮に入れて、内容をチュンアップしてあげるのも小生の仕事です。

建築士は誰のために仕事をするか?

毎日が「偽装構造計算」の話題ばかりでもうたくさん!!!
このキーワードを書くだけでブログのカウントが一気にアップしちゃうのかな?

大切なことだけ書き残したくて書いています。

それは「建築士はあくまで建築主のパートナーであるということです。」ただし建築主というのは、住宅であれば住まう人、家族であるということです。

今、騒がれていることは、確かに主人公は建築関係者ですがミスなんて生やさしいことではなく、明らかな確信をもって行った行為であって、泥棒をする気になった泥棒を防ぐのに、刑罰をいくら厳しくしても無駄なのと同じなのです。

毎日黙々と社会の底辺を支えている建築士の世界にスポットを当ててくれたことは、ある意味良いのですが、ドロマルケにしたものを綺麗に洗うには多くの時間が掛かります。
もちろん、これには努力を惜しみませんが、建築士法にも唱われているように建築主のパートナーとして活躍するのがほとんどの建築主の本望であることを大声で叫びたい気持ちで一杯です。