庇の思い出

古すぎて恥ずかしいくらいのヒット曲、「小指の思い出」なんて意味深なタイトル(全然普通か?)の歌を思い出します。

謎かけのように「の思い出」とタイトルを付けてしまってちょっと強引すぎる気もしますが、こちらはちっとも意味深でないけれど、小生にとっては強烈かつ運命的でもありました。

小生がまだ独立する前の駆け出し建築士の頃、一級建築士も取れて生意気盛りの頃でした。
盲目的さえ感じた元上司の庇信仰とでもいってしまってもいいように、とにかくデザインは脇に置いてでも庇を付けろの言葉に反発を覚えていたのでした。

その理由とするところは、雨漏りするような建物は建築基準法の「雨露をしのぐ」の建築の大原則をも満足しないことになるから・・・・ということだそうだった。

あのとき、理屈っぽい小生に庇の哲学的な意味があるかのように説いていてくれたならば、きっと今でもあの勤め先に居たのかもと思い出してひとりで気持ち悪く笑っていた。

ところが今はその庇を友人以上に大切に設計に取り入れてしまっている。
デザインは機能を満足してこそ本物、人の住まう屋根の下、生活を守る形、三角という力学的な安定感、天から差し込む日差し、住まいの廻りに風を起す、等々。

庇の意味やアイテムとしての無限の広がりを追い求めていることの原点が、あのときの上司との会話と不満であったことに気がついてきた。

「小指の思い出」のように痛くて恥ずかしい「庇の思い出」です。

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